<ポンポコ島物語>
その2:ポコのはなし

ポポンコ山のポコは狸暦3歳になった日、じいさまから呼ばれました。
ポコは又いつもの長いお説教だなと、少しうんざりしてじいさまの所にいきました。

「お話ってなあに じいさま?」
ポコはできるだけ笑顔で言いました。そうしないと余計に話が長くなるからです。
「ポコや、今日は少し話が長くなるぞ。」
{あれれこれじゃあさっきのご機嫌とりはなにもならないや}
ポコはそう思いましたが、仕方なくじいさまの前に座りました。
と突然、今まで切株に座っていたじいさまが地面に座りこみました。
「ポコや、いや ポコ様、どうか今までのご無礼をおゆるしください。」

ポコはびっくりしました。だって今までじいさまがそんな話し方をしたことがなかった
からです。ポコはじいさまに聞きました。
「じいさま。どうかしたの? おいらびっくりするじゃないか。」
でも じいさまは真剣な顔をしています。ポコはだんだんと不安になってきました。
ポコが黙ってしまったのをみて、じいさまはポツリポツリと話し出しました。

「ポコや いやポコ様。あなたは本当は私の孫ではありません。あなたが生まれたその日、
いや、あなたはこのポポンコ山で生まれたのではないのです。あなたは・・」と 
じいさまは、はるか遠く、深い断崖で離れているポンコポ山を指差し話を続けました。
「あなたは、あのポンコポ山の統領の子供として生まれたのです。それに
あなたにはもう一人コポという弟がいます。弟様は隣のポポコン山に住んでいます。」
ポコはびっくりしてしまいました。おいらが じいさまの孫ではない?それにおいらには
兄弟がいる。では、おいらのおとうやおかあは?いったいどうしたのだろう。じいさま
からおいらが生まれてすぐ亡くなったと聞かされたけど・・・・あの恐ろしい山のことは
いったどうなってるんだろう?

ポコの頭の中で考えがグルグル回り始めました。
と、じいさまが急に泣き出しましたから、ポコはさらにびっくりしてしまいました。
「じいさま。泣かないで。おいらあまりにも急な話だったから驚いちゃったけど、
ちゃんと聞くから話しておくれよ。」

「あの日は・・・」じいさまは又話し始めました。
「あの日はとても天気のいい日じゃった。統領、つまりポコ様の親父さまとわしは
生まれたばかりのポコ様とコポ様の誕生会のことで話しておったんじゃ。・・・・
それまではポンポコ島は今のように離れてはおらなんだ。一つの島だったのじゃ。
突然、南から真っ黒な雲がやってきたかと思うや、あっという間にポンコポ山を
おおいつくしたんじゃ。そして、その雲の中からなんと狐族が襲ってきたんじゃ。
・・ポコ様もご承知のとおり、われら狸族と狐族は昔から争いが絶えたことがない。
じゃが、こんな雲に乗りこんで襲ってくることはなかった。」

じいさまは、その時のことを思い出したのかブルっと身震いをして話を続けました。
「風水の術を会得した狐族がおったんじゃ。風水の術は我が狸族が代々たった一人のみに
伝授していく術だが、どういう訳かそれが狐族に、しかもそれを戦いの道具にするとは!」
じいさまの頭からは怒りで湯気がでてきました。

ポコは詳しいことがもっと聞きたいので、じいさまをなだめました。
怒りがややおさまったのか、じいさまはまた話し始めました。

「そんなわけで、なんの準備もなかったから、我が狸族は戦いに敗れ、
全員あわててコポンポ山の方角に逃げ出したのじゃ。
だが後を追いかけてくる様子だったので
風水の術をもったポポンが、
ポコンポ山とコポンポ山の間に大きな割れ目を作ったのじゃ。

それが、今こうして向こう側と深い谷によって分かれているという訳じゃ。」

ポコは、状況が次第にわかってきました。でも、気になることがあります。
「ねえ じいさま。おいらと その弟のコポはどうして離れてしまったの?それに・・」
ポコは一番気になることを思い切って尋ねました。
「それに おいらのおやじさまとおふくろさまは どうなったの?」

「ポコ様の親父様とおふくろ様は皆を逃がす為、最後まで戦いなさったのじゃ。
その後地面が割れてしまったので、どうなったのかわしもわからん。じゃが、
多分とらわれとなって あの ポンコポ山の牢にでも閉じ込められておられると思う。」
「ポコ様とコポ様をわしともう一人が抱きかかえ逃げる用意をしている時、親父様から
言われたのじゃ。3歳になるまではこのことは話さないでおくようにと・・・
そしてそれまで別々に面倒をみるようにとたのまれたのじゃ。」

「ポコ様、今まで本当に厳しくいってまいりました。でもこれはひとえにポコ様の
ことを思ってのこと、決して悪気があったわけではございません。どうかお許しください。」
ポコはここまで聞いた時、胸の奥深くからなにやら得体の知れない気持ちが湧いてきました。
「じいさま ありがとう。おいらを守ってくれて、それにおいらをここまで育ててくれて。」
「おいら じいさまの話を聞いて決心した。おいら あのポンコポ山へ行く!。」
「そして 親父さまやおふくろ様を助けに行く!」

このポコの言葉を聞いてじいさまは、しわくちゃな顔をさらにくしゃくしゃにし、
涙をいっぱい浮かべて、「おお それでこそ ポンコポ山の統領の息子じゃ!」
「おやじさまも、きっとよろこんでおいでじゃ。」「うれしや。うれしや。」と言って
また泣き出しました。

{やれやれ 今日のじいさまはよく泣くことだな。でも じっさいどうしたら向こう側に
行けるのだろう? それに 弟のコポに会いたいな。いっしょに行こうと言おう。
それに おやじさまとおふくろさまは本当に生きているのだろうか?どんな方だろう?}
次々と考えをめぐらせている時、一人の若者がじいさまの所に来ました。
「じいさま 用意ができました。」

おいおい泣いていたじいさまも、泣くのをやめき然とした態度となり、「わかった!」
と答え、若者を退けました。
「ポコさま、わしの後をついてきてくだされ。 よっこらしょっと。」
こう言ってじいさまはたちあがり、トコトコと歩き始めました。
ポコも黙ってその後について行きました。

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