ぼくのなまえは”ピキ”。
ぼくには、それはたくさんの兄弟がいるんだ。
なまえは”イッピキ””ニッピキ””サンピキ”
”ヨンピキ”・・・全部でジュウヨンピキ”までいるんだ。
しかも みんな同じ顔をしてるもんだから、
「おい ロッピキ。」って声をかけたら
「サンピキ ちがうよ。ぼくは ハッピキだよ。」
「ちがうよ ぼくは ピキだよ。」ってなぐあいさ。

お母さんだって ときどきまちがえたりするんだ。
このまえなんか、おやつを食た後でさ
「おやつ たべたい!」っていったら 
「あれ!?お前は まだだったかい?」って二度ももらちゃった。
おかあさん、ごめんなさい。
でも、 その反対のときだってあるから、おあいこさ
こんなちょうしで、
ぼくたちはみんななかよくガンズいけでくらしているんだ。


おとうさんは、ずっといぜんにどこかへいっちゃった。
なんでもその日は池の上からおいしい食べ物がおちてきて
みんなで食べていたんだと。
そのうち みんな池の外へ飛び出していってしまったんだと。
おとうさんも、たぶんそうじゃないかとおかあさんがいっていた。


ぼくの おおばあさんは、この池の長老なんだ。
だいぶんと耳が遠くなって、
よほど大きな声でないと聞えないみたいだけど、
その おおばあさんがずいぶんと前に言っていた。
「池の上から降りてくるものは、食べたらダメじゃ。」
「これは 悪魔のさそいじゃぞ。」って
でも、さいきんは おおばあさんもときどき つっついて
いるみたいだけどね。

ぼくも こわかったけど 少しつっついたことがあるんだ。
とってもおいしいんだ。
おかあさんが作ってくれる料理もいいけど
これが最高にうまいんだな。

その夜、ぼくは ひとりでお月様を見ていたんだ。
うすい雲が お月様のそばを流れていたよ。
ああ あしたもいい天気だな・・・・・


きょうはとってもいい天気だな!
いつものように 兄弟で遊んでいたときです。

池の上から なにやら 白いものがゆらゆらと 落ちてきます。
はじめぼくは なんだろうと 見ていたのですが
みんな わ〜〜と いっせいに 寄っていきました。

ぼくも 行こうとしたんだけれど おかあさんが
行ってはダメって いったんだ。
そのうち きゅうにだれかが 池の外へ飛んでっちゃった。
そして また・・・みんな ワイワイしてる時だった。

ちょこっと違がうところから 大好物のミミズが落ちてきたんだ。
ぼくは スイっと そのそばへいって食べようとしたんだ。
すると ぼくの横から 
おおばあさんがやってきてその ミミズを パクって食べちゃったんだ。

あ〜〜 ぼくが食べようとしたのに・・・
そう おおばあさんに言おうとしたときだったんだ。
おおばあさんが ズルズルと池の上に引っ張られているんだ。
ぼくは びっくりして 「おおばあさん どうしたの?」って
言ったんだけど、どんどん 上のほうに行ってしまうんだ。
あわてて おかあさんを 呼んだんだけど・・・、
おおばあさんも 必死に戻どろうとしていたんだけど、
とうとう 池の外にいっちゃったんだ。



!!!!!このガンズいけの一大事です。
この池を見守り,取仕切っていたのは おおばあさんです。
おおばあさんが いなくなったということは、
ぼくたちは このいけから 去らなければならないんです。
なぜって これは ぼくたち 鯉の世界のシキタリなんです。
みんなで あつまって 相談をしましたが、
ぜんぜん意見がまとまりません。

「ぼく ちょっと 池の外を 見くる!」
ぼくは そう言って おかあさんが止めるのもきかず
池の上に泳ぎりあがり
思いっきり ハネました。

チャポン!

飛び跳ねた時に、池の外を見ました。

「人間!人間の子供がいる!。」
ぼくは このことを 皆に話しました。
ジュッピキが 「どれどれ。」っていって
思いっきり 飛び跳ねました。

チャポン!

「そうだ!人間だ!。」
ジュッピキも人間の子供を見たようです。
そこで 池の外の様子を見るために 一斉にジャンプしました。


「人間につかまってしまったんだ・・・・」
みんなは ションボリしました。
こうなっては 覚悟を決めなければなりません。
引越の準備をするために、みんなは
それぞれのところへ戻どろうとしたときです。

「お〜〜い なにしてるんじゃ〜?」
池の上の方から おおばあさんの声が聞こえました。
みなは 一斉に 池の上をみました。
そこには おおばあさんの姿がありました。
そして その後から ジュウニピキや ナナピキの
姿、それから いとこの姿もありました。


「ばんざ〜い!」
みなは おおばあさんのまわりに集つまりました。
「人間の男の子が 返してくれたんじゃ。」
「ありがたや ありがたや。」
みんなは うれしさのあまり 背びれをいっぱいふりました。
「どれ、それじゃあ わたしが お礼に行ってこかね。」

おかあさんは 池の上に向かって すごい速さで
泳いでいきました。
そして 思いっきりジャンプしました。

ピチッツ・ジャブン!

そのとき 男の子とチラっと目が合いました。

「ありがと」

おかあさんは 戻ってきました。
よかった これで またこの池であそべるぞ!
ぼくは 池のまわりを グルグル泳ぎました。

                  おわり


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