ぼくの名前はようへい
ぼくとなおや君は大のなかよし。
今日、学校の帰り道のことなんだ。
「ねえ ようへい君。明日の日曜日に魚つりに行かない?」
「えっ 魚つり?」
「うん ガンズ池に鯉をつりに行こうよ。」
「うん じゃあ 明日ね!」
ぼくらはこう約束をして別れたんだ。

なおや君と別れて家に帰ってから、ちょっぴり不安になちゃった。
だって・・・
ぼくはあまり魚釣をしたことがないんだ。
「お兄ちゃん、早く帰ってこないかなあ。」
お兄ちゃんはね 河童ってあだ名があるんだ。
だって、川や池のことをとてもよく知っているからなんだ。


「そうか、ガンズ池へ鯉をつりにいくのか。」
「あの池にはとってもでかい鯉がいるぞ。”ぬし”って呼んでるんだ。」
お兄ちゃんはそう言いました。
「よし!ようへいが魚釣りに行くなら、いろいろ教えてやろう。」
お兄ちゃんはそう言って、えさのつけかたや、つりかたを教えてくれました。
「池のそばに大きな切り株があるから、そこがポイントだぞ。」
「ありがと。お兄ちゃん。」
「やっぱ 持つべきものはお兄ちゃんだ!」
ぼくは本当にそう思いました。
お兄ちゃんは、3番目に大事にしている釣竿を貸してくれました。
ぼくの不安はどっかへ行ってしまいました。
「よおし 明日はガンバルゾ!」



「わあ!」
次の朝ぼくはおもわず大きな声をあげちゃった。
だって、とっても気持のいい天気なんだもん。
釣ざおの点検と、バケツ、水筒、お菓子、ええ〜と
「そうだ!えさだ」
・・・ちょっぴりいやだな。だってお兄ちゃん絶対ミミズにしろって
きかないんだから。
でも、せっかくお兄ちゃんが教えてくれたんだ。まもらなくっちゃ!

「おはよ!」
なおや君が自転車でむかえにきてくれました。
「おはよ!なおや君。」
ぼくは大きな声でいいました。
「さあ いこか」
「うん!いこ」
「いってきま〜す。」
ぼくたちは ガンズ池に向かって 元気にゴー


し〜ん
朝早くだったので、まだだれも来ていません。
「まだ だれもいないや。絶好のチャンス!」
なおや君はとっても張り切っています。
「うん!チャンスだね。」
「さあ はじめよか。」
なおや君はそう言うと、お兄ちゃんが教えてくれたポイントで
素早くじゅんびを始めました。

ありゃりゃ、せっかくお兄ちゃんが教えてくれた場所なのに、
でも なおや君が準備を始めちゃったし、まあいいか
ぼくは あたりをきょろきょろみまわしました。
どこがいい場所なのか見当がつきません。
ふと、大きな木の下のところに 
少しだけ 広くなったところを見つけました。
「よーし、あそこに決めた。」
ぼくは 木の下で 準備を始めました。

「やったあ!」
なおや君 もうゲットです。
ピチピチ・・・太陽の光にあたって鯉がキラキラしています。
「すご〜い なおや君もう釣れたの。」
「うん!一匹目ゲット!」
なおや君は得意そうに言いました。
よ〜し ぼくもがんばるぞ
「よし!二匹目ゲット」
「やった!三匹目めゲット」
なおや君は次々と釣りあげていきます。
・・・・・ぼくはまだ一匹も釣れません。
なおや君はうどん粉をねったえさを使っています。
ぼくはミミズ
「ちぇっ!」
ぼくは 少しばかり つまらなくなりました。
お兄ちゃんがミミズって言うからミミズにしたのに
ちっとも釣れないや。
やっぱ 場所が悪いのかなあ・・・
どこか別の場所にうつろうかな・・・
と思っていたその時です!
ググー!
ぼくの竿が急に重くなりました。そしてすごい力で引っ張られました。
「わあ〜〜〜」
ぼくはとっさの出来事びっくりして、思わず大きな声を
あげてしまいました。
なおや君が驚いて
「ようへい君どうしたの?」
と声をかけてくれましたが、返事をする余裕がありません。

ぼくは必死で竿を持っていました。
「ゆっくりひっぱるんだ!」
「それから 巻き取りするんだ!」
なおや君が教えてくれました。
ぼくはなおや君の言うとおり、竿をゆっくり持ち上げ
それからリールを巻き上げました
どの位時間がたったのかわかりません。
気が付くとぼくは竿を手に大きな息をしていました。
「ようへい君、やったね!」
なおや君がタモに入った鯉を見せてくれました。
50センチ、いやもっと大きな鯉がタモの中で動ごいています。
「これ ぼくが釣ったの?」
ぼくは思わずこう言いました。
「そうだよ すごいや ようへい君!」

手が、足がブルブルふるえてきました。
ぼくは初めてこんなでっかい鯉を釣りました。

「でっかい! これは”ぬし”かも知れないね。」
なおや君はそう言いました。
ぼくもそうかも知れないと思いました。
「さあ 又釣り始じめよ。」
なおや君はそういって自分の釣場に戻って行きました。

ぼくも また釣りをはじめました。


し〜〜〜〜ん
二人して釣っていた時です。

ポチャ!

池の向うの方で鯉が一匹ハネました。
続いて又 ポチャ!
それから 又 ポチャ!ポチャ!ポチャポチャポチャ・ポッチャン!
何匹かわかりません 
小さな鯉やら大きな鯉が 池の水面で飛び跳ねはじめました。

ぼくは釣のをやめて、それをじっと見ていました。
なおや君も同ように見ています。

何度も何度も鯉は飛び跳ねました。
ぼくは ハッとしました。
さっき釣った鯉はきっとお母さん鯉なんだ。
だから 子供の鯉が心配してるんだ。

「ねえ なおや君。」
「なあに ようへい君?」
「ぼく この鯉を放なしてやろうと思うんだけど。」
「逃がしてやるの?」
「うん きっとお母さん鯉だと思うんだ。 だから・・・」
「そうかも知れないね。ぼくの釣った鯉も兄弟かも知れないものね。」

ぼくたちは 結局釣った鯉を逃がしてあげました。
バケツの中も、ビクの中かも もう一匹もいません。
全部池に戻どしてあげました。
でも なぜか二人とも ホッとした気持ちです。
なおや君と顔を見合わせ大きな声で笑いあいました。

それから 二人して 竿を片付け 帰り支度をしていた時です。

ピチッツ・ザブーン!

大きな鯉が池の真中で飛び跳ねました。


家に帰るとお兄ちゃんがファミコンをしていました。
ぼくは これまでのことを話しました。
「こ〜〜んな デッカイ 鯉だったよ!」
手いっぱい広げて教しえてあげました。
それから 飛び跳ねた鯉のことも話なしました。

「ふ〜〜ん。ようへい お前がもし 釣った鯉を逃がさずに
もって帰えってきたら、多分 あの池では もう魚釣りができなく
なったかも知れないね。きっとその鯉は池の”ぬし”だったんだ。」
「よかったね。」

お兄ちゃんはそう言って又ファミコンを始じめました。
ぼくは なんだかうれしくなりました。
またあの池で魚釣りができる!
また あのデッカイ鯉にあえるかも知れない。

「よおし、今度はなおや君よりたくさん釣るぞ!」
ぼくは自分の部屋に入りました。


                   おわり


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