龍神様とかわわらし <一幕二景>
舞台設定について
舞台全体の下手側3/4程を一段高くする(第二舞台)
のこり1/4は、語りのおばばや 独白の場所となる
できるならば スポットライトがあたるようにするよい
音楽はじまり しばらくして幕があく
スポットライトに照らされた中に 一人の老婆が立っている
第二舞台はまっくら
おばば (観客席を見回してゆっくりと)みんな 今日は遠いところから
この おばばの話を聞きにきてくれて ありがとよ・・
第二舞台が次第に明るくなってくる
舞台には 大きな池があり、 その周りには枯れ落ちた大きな木々が立ち並んでいる
その池の縁に2〜3人の村人がいてなにやらしている
おばば 今日の話はのう ほれ(といって池の方を指し)あそこの大きな池に住むかわわらしの話じゃ
音楽次第に消える
おばば あの池の水はのう 村の人々は飲み水としてつこうていたくらいきれいな水じゃったんだが
何時の頃からか とてもきたなくなりあたりの木々も次第に枯れ始めたんじゃ
それというのも あの池に かわわらしが住み着いたからなんじゃ・・・・・・
スポットが消えおばば退場
村人1 (こわごわした声で)おいおい これでええかの もう出てくるとちがうかの
村人2 (同じように震えた声で)ああ これでええじゃ ええじゃ
村人3 けんど よわったのう
村人12(二人して一緒に)ああ よわった よわった
村人3 そのうち 要求が大きくなって そのうち かかあを差し出せ娘を差し出せなんちゅうて
行って来るんではないじゃろか
村人12(二人して) そうじゃのう そうじゃのう こまったのう
効果・・・太鼓の音 はじめちいさくしだいに大きな音
最後にドンと大きな音
村人達 わあ!(といって一斉に逃げ出す)
池の中から 河童が頭だけを出し あたりを見回す
やがて 池の中から出てくる
この時には 河童の頭のてっぺんには まだ髪の毛がいっぱいある
村人たちがいたところへ来る
河童 (品定めをしながら)ふん!今日はこれだけか 人間共め バカにしやがって
よおし!(そう言ってあばれはじめる)
効果・・・ものの壊れるような音
しばらくして
河童 ああ さっぱりした じゃあこのくらいにするか
そう言って 河童は池の中にはいる
スポットがついて おばばが登場する
おばば このように村の人々は かわわらしの要求にいろいろの品物やら
食べ物を差し出して かわわらしのわるさを とどめていたんじゃ
村にわるさをしに来るのは少なくなったんじゃが だんだんと
要求が多くなってきたんじゃ 村の人々は ほとほと困り果て
なんぞ ええ話がないものかと 集まって相談したんじゃ
おばば 退場 かわりに 村人が登場
村人1 なあ 竜の神様に お願いするのは一番じゃと思うがのう
村人2 けんど 竜の神様を呼ぶのは てえへんおそろしかことじゃといわれとるじゃないかの
村人3 そんじゃ そんじゃ なんせカミナリはなるは 土砂降りの雨は降るは・・うろっとすると
村まで流されるちゅう話じゃなかったかいの
村人1 そりゃ そったらことも 言われとるがの じゃが このままじゃ いつまでたっても
あのかわわらしに オラたちの村をいいようにされるだけじゃぞい
村人 (一緒に)そうじゃのう そうじゃのう
村人1 !な そうしよ そうしよ 竜の神様にお願いしよ
村人達 んじゃ そうすべえか・・
村人1 !な 村へ帰ってもう一度 話をしようぞい
村人たちは退場する
舞台全体がくらくなる しばらくして音楽はじまる
スポットがついておばば登場
おばば こうして 村の人々は 竜の神様に お願いすることになったんじゃ
スポットが消えおばば退場(舞台全体が真っ暗)
村人1 (祈るような声で)天の神様 竜の神様 どうぞおらの頼みをきいてくれ・・・・
村人達 (一斉に祈るような声で)天の神様 竜の神様 きいてくれ・・
村人1 おらのたのみ きいてくれ 竜の神様きいてくれ
村人達 (一斉に)きいてくれ
音楽が消え 突然 稲妻と同時に大きなカミナリの音
第二舞台の池の縁に村人たちが集まってお祈りをしている姿が稲妻のあかりで みえかくれする
効果・・・・雨の音も入ってくる
第一舞台のスポットの中に竜の神様があらわれる
龍神 私を呼んだのは おまえか
村人1 (稲妻の光の中で)そうです おらがおよびしました
龍神 頼みというのは なんじゃ?
村人1 この池のかわわらしが おらたちの村さきてわるさをするだ
お願いですから わるさをしないように 竜の神様から行ってくれ・・・・・
村人達 (一斉に)お願いです 助けてください
龍神 よし わかった・・・だが そのいたずら者を呼び出すのに大雨をふらせるがよいか?
村人1 すると・・・大洪水になるんで?・・・
龍神 そうじゃ そうなるかもしれんの 家に帰り洪水に備えよ
村人達は口々にお礼をいってたいじょうする
稲妻と大きなカミナリの音 同時に大雨の音・・・
<少 間>
急に静かになり 第二舞台がだんだん明るくなってくる
池の中から河童が頭だけを出し あたりを見回し それから池の縁に出てくる
洪水によって枯れた大きな木々はなくなっているまわりを きょろきょろみまわしていると・・
第一舞台のスポットがついて 竜の神様があらわれる 河童はそれに気がついて
にげ出そうとするが、そのとき 稲妻が走り河童の頭のてっぺんの毛を切り取ってしまう
河童 ウワア・・・(といって頭を押さえその場に座り込む)
龍神 これ そのほう 聞くところによると たいそうわるさをして
村の人々を困らせているそうじゃな・・ 罰として お前の妖力を奪い取った
これでお前は陸の上には長く居ることが出来なくなったはず そして
お前の食べるものは キュウリのみじゃ
河童 龍神様 それはあんまりだ・・・おらは村にも生きたいし いろんな物もたべたいし・・・
第一おらは 村の人たちにそんな悪さをしていない・・(言葉を遮って)
龍神 まだ そんなことを言うのか
それではお前をこの池の底のほこらに閉じ込めて一生出てこれなくしようかの・・・
河童 アワワワ・・・ それだけはかんべんしてください もう わるさは金輪際しません
龍神 本当じゃナ?私との約束じゃぞ・・
私はこれから用があってちと遠いところにいかねばならぬ 百と八月後に またこの場所に
戻るゆえ この池をもとのように きれいな池に変えておくのじゃ わかったな
稲妻とカミナリがなって 龍神様は消える
音楽はじまる
河童はしかたなく 池のあちこちをかたづけはじめる
池に飛び込んだり また池の縁にきてかたづけたりする 外ではあまり長く居るころが出来ないよう
な感じをだす
おばば こうして かわわらしは池をきれいにしはじめたのじゃ
河童が池に飛び込むたびに 池の周りのきぎが青々として立っていく そうして
池のまわりがすべて青々とした木々に囲まれる
おばば (池の方を見ながら)どうじゃ もうすっかり元通りになったぞい・・・
まもなく龍神様が行ってらした 百と八月が来るがの かわわらしは
その約束を守ってよう働きつづけたのじゃ
音楽次第にちいさくなる おばば退場
河童 ふう(と息をはく)きれいになったな これで龍神様もゆるしてくださるのかの・・・・
稲妻がはしりカミナリがなる 龍神様が現れる
龍神 ほほう 私との約束をしっかり守って きれいな池にしたな
これから お前のことを河童とよぶことにしよう そしてお前は私の召使として
この池に住むのじゃ 私はちと用事があって 百と八月後にみたび この池にきて
この池の水神となるであろう それまで お前はこの池をしっかり守っているのじゃ
わかったな 河童?
河童 龍神様有難うございます よくわかりました 龍神様がお出でになるまで
しっかりとこの池をお守りいたします
龍神 ところで 河童
河童 はい
龍神 お前の食べ物のことじゃが キュウリのほか 何か食べたいものがあったら申すがよい
お前の働きに免じて ゆるすぞ
河童 いいえ 龍神様 私はキュウリが大好物になりました
キュウリ以外の物はいりません
龍神 そうか それならば それでよい・・・ではいって来るぞ
稲妻が走りカミナリが鳴って龍神様は退場する
河童 さてさて 今度は池の中のほこらじゃ ほこらの掃除をしよう
河童は池の中に飛び込む
音楽はじまる
おばば登場
おばば こうして かわわらしは 河童となって この池に住み着き龍神様がいらっしゃるまで
しっかりと この池をお守りしたのじゃ ほこらも きれいになったとみえて
河童は時々池の上まで出てきては 龍神様の到来をまっているのじゃ
ほれ あのとおり
河童は池から頭だけを出し あたりをきょろきょろみまわしている
おばば これで きょうの話はおしまいじゃ それでは さいなら
スポット消えおばば退場
河童は頭だけを出し きょろきょろしている
音楽 舞台の照明とも だんだんちいさくなる
幕閉まる
おわり