「ありがたや、ありがたや。」

気がつくとポン助はなにやら高い台の上に寝かされていました。

人間がポン助の周りを囲み、けんめいにお祈りをしています。

なにがどうなったのかわかりませんでした。

ポン助は薄目をあけてまわりをみました。

ご馳走がいっぱいならべられています。飲み物もたくさんおいてありました。

ゆっくり横をみると、きれいに着飾った一人の女の子が、

これまたきれいに着飾ったお母さんと、だきあって泣いています。

「ありがたや、ありがたや。」急に耳元で声がしたので、ポン助はビクっとしました。

「ポンポコ氏神様が、身代わりになってくださるんじゃ。」

「ほんに、ありがたいことで・・・」

「あの子を台座に乗せようとした時、突然氏神様がおりていらっしゃって・・・・」

「そうじゃそうじゃ。天から舞い降りてこられたときは、本当にびっくりしたけど、

こうしてあの子の身代わりになっていただけるなんて、なんとありがたいことじゃ。」

「ありがたや、ありがたや。」

やがて人々は笛や太鼓をならしなにやら一心にお祈りを始めました。と、

女の子が母親の手を振り切ってポン助のところにやってきました。

「ポンポコ氏神様、ごめんなさい。私、お母さんと別れるなんて・・・・。」

「ごめんないさい。あのポンコポ山へ行くなんて・・・・」

「ポンポコ氏神様、本当にありがとう。」

そう言って 女の子はまた母親の処に戻って行きました。

事態はようやくのみ込めました。

ポン助はポンポコ氏神様と勘違いされ、どうやら女の子の身代わりとして、

あの恐ろしいポンコポ山へいくことになったみたいです。

ポン助は、あの可愛い女の子の為、この村の人々の為

 身代わりとなって行く事を覚悟しました。

一転空が急に黒い雲で覆われてきました。

人々はあわてて逃げ出しました。そして、周りにはだれもいなくなってしまいました。

ポン助も大変怖かったけれど、傍にあったまんじゅうをきれいな女の子に化かし、

自分はその横のリンゴに化けてじっとしていました。

黒い雲は次第に空の上から降りてきました。

そして、その台座の近くまで来た時、その雲の上から声がしました。

「おい、今日の品物はまた格別だぞ。」

「ほんとだ、へへへ 人間なんてちょろいもんだ。ちょこっと脅かすとこんなことだもんな。」

「さあ 早速運ぶ事にしよう。ご主人がポンコポ山でお待ちだからな・・・」

なんと!それはキツネたちでした。

「なあんだキツネが悪さをしていたのか。」ポン助は正体がわかって安心しました。

「よおし それなら おいらが こいつらを懲らしめてやろう!」

ポン助が化けているとは知らず、キツネたちは 台座を黒い雲に積み込みました。

そして また空高くへと 浮き上がりました。

ポン助を乗せた黒雲はポンコポ山へと向かっていきました。



つづく