嫁ケ池の願い塚 <一幕一景>

<舞台の設定について>

舞台全体の下手側四分の三ほどを、一段高く設置する(第2舞台)

物語はここを中心に進行してゆくので、出来るならばここにもう一つの

舞台を作ったほうが、良いと思われる。

上手側は語りの おばばや独白の場所となる(第1舞台)ので、

スポットライトがあたるようにすると良いと思う。

音楽…・静かな澄み切った感じの曲

舞台上手部分のみ幕があく。 

一人のおばばが立っている。スポットライトのなかから 観客をみまわし

ゆっくりと話しかける

おばば  みんな今日はとおいところから このおばばの話を聞きにきてくれて

          ありがとよ……・

          今日の話はの、 この山奥深くにある 嫁が池の願い塚の話じゃ

音楽切り替わってどこか神秘的な感じの曲になる

おばば  むかしむかし この山奥深くにはの 大きな池があっての

           そこには 河童がすんでいたそうじゃ。

第2舞台にかかっていた幕があく。音楽次第に消える

舞台には大きな木に囲まれた池があり、 小鳥の鳴き声が辺りにこだましている。

池のほぼ中央よりに 河童が最初頭だけを出して 辺りをみまわす。

しばらくして 体半分を水の上に出し、さっきと同じようにあたりを見回している。

おばば  この河童はの 随分と昔から住んでおったんじゃ。

           この池へ それはそれはきれいな娘が 水を汲みにくるようになっての

           河童はすっかり その娘が好きになってしまっての、何とか自分の

          お嫁様になって欲しいと思うようになったんじゃ

あたりを見回していた河童は突然水しぶきをあげていけの奥深くへはいってしまう。

舞台下手より水瓶を持った娘がなにやら唄を歌いながら登場

娘      小鳥さん おはよう。今日もとっても いい天気ね。

         (そう言いながら水を汲み始める)この池の水はとっても冷たくて気持ちがいいわ。

      この池の水神さまは さぞかし りりしい方なんでしょうね。…(水を汲み終え)

      じゃあ 又ね 小鳥さん(そう言って立ち去る)

再び河童が頭だけを水の上に出し、それから 半分だし…・

ついには 池の外にでてくる 去った娘のほうをずっとみている。

おばば  河童はどうも我慢ができなくなり 何とかして自分の嫁にしようと

          考えて若者に変身することにしたのじゃ。

舞台暗転

小鳥のさえずりで 次第にあかるくなる

若者に変身した河童が大きな木の陰にかくれている。そこへ娘が水を汲みにでてくる

娘      小鳥さん おはよう 今日もとってもいい天気ね。

         (そう言ってみずを汲み始める…・突然)あっ!----

           困ったわ どうしよう おばあさまから戴いた髪飾りを 落としてしまったわ…・・

      どうしよう………

そこへ若者に変身した河童が木の陰からでてくる

河童    どうかしましたか?

娘    (突然出てきた若者にびっくりして)…・・

河童   突然でびっくりされたでしようが、私はずっと前からあなたのことは知っていました。

娘      !えっ?

河童    いったいどうしたのですか?

娘    (ようやく落ち着いて)おばあさまから 戴いた髪飾りを池の中に

          落としてしまいました。とっても大切にしていたのに…・

河童    なんだ そんなことか それじゃあ私がとってきてあげよう

      (そう言って水のなかに飛び込む)

娘は心配そうに水の中をのぞいている

しばらくして…河童が水の中から出てくる

河童    この髪飾りですか?(そう言って差し出す)

娘      はい この髪飾りです もしなくしたら おばあさまに申し訳なくて

           どうしようかと思っておりました。本当に有難うございました。

          あのよろしければわたしの家に来て下さい。こころばかりのお礼がしとうございます。

河童    喜んで伺います。さあ行きましょう。どこですか?

娘      その先の小道を少し行ったところです。

河童    わたしが その水瓶を持ちましょう。さあ(そう言って受け取る)

二人はそろって歩き始める スポットがついておばばが登場

おばば  娘もの この若者のあまりにもりりしい姿に 心を奪われての…・

         そうして 二人は夫婦となって 娘の家出暮らすようになったんじゃが

スポットきえる おばば退場

音楽 かなしそうな感じの曲

第一舞台に 若者に変身した河童が登場

河童    わたしの可愛い嫁ごよ 私はもともと河童なのじゃ 眠るときだけは

           どうしても あの池でないと ダメなのじゃ ゆるしてくれ

           朝早くもどるからな……

そう言って若者に変身した河童は 下手側に退場する

つづいて 嫁ご(娘)が登場する 若者が去った方を気にしながら

嫁ご    私のだいじな旦那様は 私が眠ると よなよなどこかに 出かけなさる

          今夜は思い切って後をつけてまいりました。

        いったいどうしてなのでしょう…・どうやらあの池の方に行かれるみたいだけど……・・

そう言って 嫁ごは下手側にたいじょうする スポット消える

第二舞台には 元に戻った河童が下手より登場

下手を気にしながら ついには 池の中に入る それと同時に下手より嫁ごがはしって登場する。

嫁ご    (驚いた様子で)ああ あの方は本当は この池に住む河童だったんだわ

           だから私に気遣って、こそっとこの池に戻って…・そして 朝また私の所に……・

     やさしい私の旦那様 それでは私が---私がお側に参りますいつまでも一緒に-----

そう言って 嫁ごは池の中に飛び込む

音楽消える<舞台暗転>

第一舞台にスポットに照らされた おばばが登場

おばば  こうして 娘は池にとびこんだのじゃ……

第二舞台がだんだんと明るくなる。 音楽 神秘的な曲

池の縁のやや上手よりに何か塚のようなものがある

おばば  村の人々は いつしかこの池のことを 嫁け池と呼ぶようになったんじゃ

          そして この池のほとりに 娘の願いをたくした 塚をたてたのじゃ…

          それが それ(といって塚のほうに手を向け)あの塚じゃ…・

           これで おばばの話はおわりじゃ …・うん?それからどうなったって

           いいや おばばは それからのことは ぜんぜんわからん わからんが…

           きっと二人して 仲良う暮らしていると思うがの…

           では さいなら

スポットがきえる おばば退場

第二舞台  池の中から 河童が頭だけをのぞかせる…・・

続いて もう一匹 さらに 小さな河童の頭がみえる

三匹が 同じように あたりを見回し そして 体半分を 池の上に出す

それから 再び池の中にもぐる

音楽次第にちいさくなり 幕閉まる

                       おわり

                           くりっくで かっぱじまに もどります