【たぬきじぞう】

真っ暗な中で舞台の幕が開く

テケテケテケテケ・ドン:太鼓の音

舞台がパッと明るくなる。

舞台はとある田舎の峠道 真中に大きな木があり、

その横にやや太めのお地蔵様が立っている(タヌキの顔に似ている)遠くに山々が見え、

小鳥のさえずりがきこえてくる。

効果:カラスの鳴き声 バタバタバタ カラスがお地蔵様の頭の上に止まる。

地蔵様(じつはお地蔵様にバケた いたずらタヌキ)

    こら!カラスあっちへいけ!じゃまだ じゃまだ!

(カラスはびっくりして飛び立つ)

(少間:舞台上手より一人の男が歩いてくる)

旅人  おうこんな所にお地蔵様が、お地蔵様どうぞ道中が無事でありますように

    (手をあわせる)(なにやら取り出して)

    これは私のお昼のおにぎりです。一つどうぞ召し上がってください。

(男はそう言って下手の方に歩いてゆく。男が下手の袖に消えるかいなや)

(テケテケテケドン太鼓の音 お地蔵様にバケていたタヌキが現れる)

たぬき  やったやった。うまくいったぞ。やあ これはおいしそうなおにぎりだ。

  丁度お腹もすいてるし、早速たべよう。パクパク、ムシャムシャパクパクごっくん。

  ああおいしかった。でももう少したべたいなあ(あたりをみまわす下手の方を見て)

  ありゃりゃ、誰かがこっちに来るぞ。よおしもう一度

(テケテケテケドン:太鼓の音。タヌキはお地蔵様にバケる。

下手よりおばあさんがやってくる)

おばば これはこれは お地蔵様。今日はええ天気ですなあも(なにやらとりだし)

    お地蔵様どうぞ ミカンを食べてください。

(おばばはそう言ってミカンを供え上手へあるいていく。上手の袖にきえるかいなや:

テケテケテケドン:太鼓の音。お地蔵様にバケていたタヌキが現れる)

たぬき やったやった またうまくいったぞ。今度はミカンだ。早速たべよう。

       パクパク ムシャムシャ パクパクごっくん。ああ おいしかった::

   お腹もいっぱいになったぞ。よおし 今度はおどろかしてやろっと。

(テケテケテケドン:太鼓の音。またお地蔵様にバケる。下手より男がやってくる。

お地蔵様をみてペコリと頭をさげ、通り過ぎようとする。)

たぬき  まてまて まてえ

(男は立ち止まり、辺りをみまわす)

たぬき なにか食べ物をお供えしろ。(男はお地蔵様の方を見る)

たぬき お供えをしないと食べてしまうぞおお(ドドドドドドドドオン:太鼓の音。

お地蔵様の後ろから、大きな鬼:どこかタヌキに似ている:があらわれる

   ヒエエエエ でたあああ

(びっくりして上手へにげていく。テケテケテケドン:太鼓の音。タヌキにもどる)

たぬき ハハハハ やった ハハハハハおもしろい。おもしろいな。(上手を見て)

       ありゃりゃりゃ また誰かくるぞ。

(テケテケテケドン:太鼓の音。お地蔵様になる。先ほどの男が和尚様をつれて出てくる)

男   あ・ああのお地蔵様が鬼なんです。和尚様たいじして下さい。お願いします

(そう言って上手へ逃げ去っていく)

(和尚様は、お地蔵様のそばにきてじっと見る)

和尚様 ふむふむ ちょっと変わったお地蔵様じゃ。(タヌキとわかる)どれどれ

     本当のお地蔵様か調べることにしよう。私がお経を唱えると、本当のお地蔵様なら

  シッポがでてくるはずじゃ。では、むにゅむにゅむにゅ(お経を唱えるふりをする)

(お地蔵様の後ろからシッポがでてくる。和尚様はニンマリとする)

和尚様 (お経を唱える)ナムサンマアダチンカラホイノホイノホイ!

(ポヨヨヨヨオン バケていたタヌキが現れるが、

タヌキはまだ見破られたことに気がつかずお地蔵様のふりをしている)

和尚様 ふむふむ、もう一度調べようかの。お経を唱えてエッヘンと言うとお地蔵様は

    エッヘンと言うはずじゃ。では むにゅむにゅむにゅ(お経を唱えるふり)

    エッヘン!

たぬき オッホン!

和尚様  ワッハッハ イタズラタヌキめ(和尚は又お経を唱える)

     ナムサンマアダチチンプイノプイノプイ!

(キリリリ、タヌキは動けなくなる)

和尚様 いたずらタヌキよ、どうじゃ動けまい。ハッハッハ これで本当のお地蔵様じゃ

    今まで悪さをしてきたぶんだけ良い行いをしたら 術を解いてやろう。

    いいか、せいぜい良いおこないをするのじゃぞ。ワッハッハハ

(そう言って和尚様は下手に去っていく)

(少間)

(上手から赤ん坊の泣き声が聞こえてくる。赤ん坊をおぶった女が、

あやしながら出てくる)

女   おおよしよし、困ったねえ ちっとも泣き止まないよ。よしよし

    (タヌキの所にきて)お地蔵様 どうか助けてください。

    この子がちっとも泣き止まないんです。お願いします。

(タヌキの後ろから面白い顔をしたタヌキが現れ、赤ん坊をあやす。

赤ん坊はきゃっきゃと笑い出す)

女   あれえ この子が笑った。お地蔵様、

   早速願いをきいてくれてありがとうございます。

(そう言って上手に去る)

(下手より男がとおりかかる。 突然ゴロゴロゴロ:カミナリがなって雨が降り出す)

   ヒャア困った 雨が降り出したぞ。

たぬき これこれ旅の人。私の頭の笠をかぶってゆくがよい。

(おとこは喜んでタヌキの頭から笠を取り、じぶんにかぶる)

男   お地蔵様有難うございます。後でおかえしにあがります。

   (そう言って上手に去る)

(いつしか 雨もやむ。しばらくすると、下手の方で犬の吠える声と、

なにやら叫んでいる声がきこえる。一人の女があわてて出てきて、

タヌキの側にかくれる)

女   お地蔵様、助けてください。犬が追いかけてきます。

(ワンワンワン。犬が吠えてタヌキの近くまで来る)

たぬき ゴオオオオ(大きな声を出す)

(タヌキの後ろから鬼があらわれる(どこかタヌキに似ている)

(犬は驚いて下手の方に逃げていく:キャンキャンキャン)

  ああこわかった。お地蔵様ありがとう。ありがとう。(そう言って上手に去る)

(少間)

(上手の方から人々の超えがする。村人たちがでてくる)

女  お地蔵様 おかげで赤ん坊もスヤスヤと眠りました。ありがとうございました。

   (そう言ってお供えをする)

  先ほどは本当に助かりました。笠をお返しにまいりました。

  (そう言い、笠をタヌキの頭に載せ、お供えをする)

  お地蔵様 もう犬に追いかけられなくてよかったよかった。

   本当にありがとうございました。(お供えをする)

ほかの人々もお供えをする。口々にお礼を言って上手に去る

和尚様(下手より登場。タヌキの前まできて)

   ほほうタヌキよ ずいぶんたくさんの良いことをしたみたいだな。

   その前のお供えをみればよくわかるぞよ。よおし 術を解いてやろう。

   ナムサンマアダチンカラホイノホイノホイ!

(効果音:ポヨヨヨヨン:タヌキは動けるようになる)

たぬき 和尚様ありがとう。もういたずらはしないよ。

和尚様 そうかそうか よくわかったろう。

    良いことをすれば その分自分のところに、いいことが戻ってくるじゃろう。

    よし そのお供えはおまえのものじゃ。それをもって、山に帰るがよい。

    さあいけ。

たぬき 和尚様ありがとう。もう絶対にいたずらはしないよ。ありがとうありがとう。

    (そう言ってタヌキはお供えを持って山に帰っていく)

和尚様 ワッハッハハ 可愛いタヌキよ。さてさて困ったな 

    ここのお地蔵様がいなくなった。ううむ、

    それではここにお地蔵様をたてることにしようかの。

        ナムサンマアダチチンプイノプイノプイ!

(効果音:キリリリリリ お地蔵様が出てくる。やや太めのどこかタヌキに似ている)

和尚様  ありゃりゃりゃ 少しばかり太めのお地蔵様じゃ。

     それにどこかさっきのタヌキににているのお。

    このお地蔵様はタヌキじぞうじゃ。ワッハッハッハ

(和尚様はそういいながら上手に歩いてゆく)

(少間)

(効果:バタバタバタ カラスが飛んできてお地蔵様の頭の上にとまる)

(効果:ゴオオン お寺の鐘の音が聞こえる)

(カラスがバタバタと飛び去る 舞台が次第に暗くなる)

         ::おわり::     

                        くりっくで ぽんぽこじまに もどります