ポンポコ山のたぬきのまつり   <一幕二景>

<第一景>

◎ 舞台はとある山の中のタヌキの家

◎ 子ダヌキがしきりに外を気にして 家の中をうろうろしている。

◎かすかに まつりばやしの音がする

子ダヌキ  かっかあ まだかあ はやくしないと はじまっちゃうよ かっかあ…

           とっとおも 遅いな(戸口までいったりきたりする)

かっかあ  あわてるな とっとおが 長老を迎えに行ってるだに もうすぐじゃ

      かっかあの化粧も もうちょっとで終わるだに

子ダヌキ  おら 今度のバケくらべ うまくいくかなあ…

かっかあ  大丈夫じゃて この前の練習はうまくいったろうが おちつけ おちつけ

子ダヌキ  (戸の外を見て)あっ とっとおだ!とっとおがかえってきたぞ。

      かっかあ…・かっかあの化粧はまだかあ?

◎家のむこうから とっとおがくる。 どうも 足元がおぼつかなく、

◎少しフラフラしている。

とっとお  (ややロレツがまわらない調子で)かっかあ 長老さ迎えにいってきたぞい。

      さあさ おらたちも いくべえかあ

かっかあ  (化粧を終えてでてくる)おいおい とっとお ずいぶんと

           よっぱらっちまってだいじょうぶかの?

とっとお  何言ってるう このくれえの どぶろくで いかれるおらじゃねえわ…

     おっとっと(少しよろける) さあ いくべえぞ。

子ダヌキ   いこいこ 早よう 行こ

◎三人(三匹)は連れだって外に出る。祭りばやしの音が やや大きく聞こえる

◎下手のほうに 歩き去る<舞台暗転>

<第2景>

◎祭りばやしの音がする中で次第にあかるくなる。

◎舞台はとある山奥、中央に大きな木がたっている。

◎そのすぐしたには やや太めのどこかタヌキに似たお地蔵様があり、

◎そのすぐ横に長老が座り、取り囲むようにタヌキたちが座っている。

◎みな面白そうにワイワイ騒いでいる。

◎山の上には まんまるな お月様が こうこうと輝いている。

◎長老が立ち上がり、すっと手をあげる。

とっとお    はやしをやめえ しゃべりをやめえ 長老の話がはじまるだあ。

◎はやしや 話し声がやむ しいんとしたなかで…

長老     みなの衆 今夜はよう集まってくれたのお。 年に一度のポンポコ山の

       お祭りじゃ。 せいぜい楽しんでいってくれ。… その前に この祭りの

       いわれを話さねばならんのう…(子ダヌキが小声で)

子ダヌキ   あああ またあの話を聞くのか。 耳にタンコブできちゃうよ。

かっかあ   こら しずかにしろ これがないと この祭りははじまらんぞい。

           (そう言って長老にペコリと頭をさげる)

長老     オッホン みなもすでに知っとると思うがの、わしのじっさまの その又

       じっさまの そのまたまたじっさまがの このポンポコやまに住んで

             おらっしゃった。そのじっさまはの、この村の人間どもにたいそうな

             施しをされてのお…・その為に人間どもから大変ありがたがれて、こうして

             お地蔵様として ここにまつられることになったのじゃ。

             ちょこっと昔では ポン太ちゅう方が人間の子供になったって話で

       大騒ぎになったことがあったのう。

       今宵 この場所で われわれタヌキは 永遠の平和を願っておおいに

            謡おうぞ 踊ろうぞ…・(そう言って手をあげる)

とっとお   あさ 祭りをはじめようぞ! はやしをはじめえ 酒をまわせえ!

子ダヌキ   わああい 始まった お祭りはじまった。(そう言って飛び跳ねる)

◎祭囃子がはじまる 各々に酒をまわし飲み、食べ始める

◎少しの間、祭りばやしと笑い声 話し声がつづく

とっとお   (たちあがり やや酔っ払った声で)さあて さあて そろそろバケくらべの

       はじまりじゃあ。今年の代表はだれじゃあ? こっちへ出てこいよ

◎子ダヌキと二人のタヌキがたちあがり 出てくる

とっとお   おおや あと一人たりねえぞい。だれだあ?早よう出ろ出ろ

かっかあ   出ろ出ろちゅうて おめえあまじゃろうが(皆 笑う)

とっとお   ああ そうかそうか おらだったわ ごめんごめん

かっかあ   ほったら飲み過ぎて バケできるうかいな?とっとお

とっとお   バガこけえ でえじょうぶだは みてろ!

◎とっとおは一生懸命バケようとするが(後返りを何度もしようとする)

◎バケられない 皆またまた笑う

子ダヌキ   なんじゃあ とっとお オラが先にやるじゃあ(そう言ってうしろ返りをする)

◎効果 ぽよよよよん 煙はぱっとでて 子ダヌキは茶釜にバケる。・・

◎一同喝采

タヌキ1   今度はおらじゃ それ!(そう言ってうしろ返りをする)

◎効果ぽよよよよん 煙がぱっとでて おおきな 鬼にバケる(しっぽがみえる)

◎一同 おおお と驚く

タヌキ2   こんどはあたいよ そおれ!(そう言ってうしろ返りをする)

◎効果 ぽよよよよん 煙がぱっとでて ちょうちんになる(しっぽがみえる)

◎一同喝采

とっとお   今度こそ それ!(と言ってうしろ返りをしようとするが出来ない)

       ああ こりゃだめじゃ だめじゃ (長老に向かって) 長老 おらは

       降参じゃ 一等をきめてくろ

長老    そうじゃな 大きな鬼は怖そうじゃが しっぽがみえるしな。それに

      このちょうちんもみごとじゃが、やはり しっぽがみえるのう

      ここは 見事にバケた子ダヌキが 一等じゃ。 皆の者 いかがかな?

      (一同を見回す)

◎一同喝采

◎効果 ドドン バケていたタヌキたちが 一斉に元に戻る

子ダヌキ   やったあ! おらが一等だ わあいわあい(飛び跳ねる)

長老     お前には 美味しい栗を 一月分やるでな

子ダヌキ   ありがとう 長老 わあいわあい(飛び跳ねる)

長老     はっはっは 元気のええ 坊主じゃ…・

       さあて こんどは 鼓比べじゃな まず わしからじゃ そおれ そ・れ!

◎長老は腹鼓をうつ

◎効果 ぶよよおおん(伸びきった鼓の音)

長老     はっはっは わしの鼓はこりゃだまじゃ もっともっと景気のええ

       鼓はないかの?

◎一同のタヌキがそれぞれ腹鼓を打ち出す。 色々の音がする。

とっとお   長老 おらのかっかあの鼓をきかしょ。 ええ音がするだに

       (かっかあに向かって)おおい かっかあ やってみろ

◎かっかあは 腹鼓を打つ

◎効果 ポンポコポン …いい鼓の音がする。

長老    おお ええ鼓の音じゃ こりゃ ええわい(一同うなづく)

      さあさ もっともっと 鼓打て もっともっと 鼓うて!

◎かっかあは得意になって 腹鼓をうつ 皆もそれにならって 腹鼓をうつ

◎はやしも一段とおおきくなる

長老    (鼓にあわせ うたいはじめる) 

       まつりだ まつりだ ポンポコ小山のおまつりだ

かけ声   ソオレソレ エッホイッホイ ソオレソレ エッホイッホイ

長老    どぶろくのんで 鼓をうって 今夜は一晩 うたおうぞ(かけ声 ホイ)

      今夜は一晩おどろうぞ(ホイ)

かけ声  ソオレソレ エッホイッホイ ソオレソレ エッホイッホイ

◎くりかえし うたい ついには 皆で踊りだす

◎少しの間 つづく

◎音 証明 やや ちいさく くらくなりはじめる

語り     こうして ポンポコ山のタヌキたちは 一晩中 うたって

       おどりあかしました。お月様もたのしそうにみています。

◎効果 音 次第に小さくなる

◎タヌキたちはおどっている…・次第にくらくなる

◎山のお月様のあかりのみになり 幕しまる

             おわり                       

くりっくで ぽんぽこおんどに いけますポンポコ山音頭

                        くりっくで ぽんぽこじまに もどります